亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

 横を歩くシィーンも、マキラを見て微笑んでくれたのがわかった。

「俺は、まるで子供のようにワクワクしているよ」

「私もよ」

 指を絡ませ合って、二人で少し歩いたところに馬車が待っていた。
 質素だと言われたが、落ち着いた色味の馬車なだけで中は広い。
 座った途端に、シィーンにまた唇を奪われて、愛を囁き、触れられて、抱き合う熱い時間になった。

「んっ……シィーン……もう、こんな馬車の中で……」

「誰にも見られていないし、わかりはしないさ……」

 どこへ馬車が走っているのかも、わからないくらい……シィーンに甘い悪戯までされてしまう。

「はぁ……っ……着いたか」

「……も、もう……ん……っ」

 今日の目的地へ着いたようだった。

「さぁ、おいで」

「歩けないわ……シィーンのせい」

「はは、そうだね。では俺が連れて行こう」

 服を整えて恥ずかしがるマキラを、シィーンは抱き上げた。
 お姫様抱っこされて馬車から降りると、御者ももういない。

 夜のぬるい風がマキラの頬を撫でた。
 
「え……素敵……!」

 夜に浮かび上がるような、美しい建物が見えた。
 白い大理石でできた屋敷には黄金色のドームがあり、ライトアップで光り輝いている。
 庭には豪華な噴水があり、色とりどりの花園。
 屋敷へと続く道には、綺麗なタイルが敷かれている。

「宮殿みたいだわ」

「はは、食事の用意はさせてある。此処には俺達二人っきりだよ」

「こんな宮殿みたいなとこで二人きり? 此処はホテルなの……? とても高そうよ……」

「ん? 君はいつも心配をしてくれて優しいな……大丈夫だよ」

 マキラを抱きかかえながら、笑うシィーン。
 美しくライトアップされた花園を眺め香りを嗅ぎながら、屋敷へ歩く。
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