亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

プロポーズ


 長い口づけを交わして、二人は微笑み合う。

「さぁ今日も飲んで食べて楽しもう。俺は君の笑顔が好きだ」

「ふふ、私も貴方の笑顔が好きよ」

 二人では食べきれないような、料理が並べられている。
 その真ん中に花が飾られているのだが、見覚えのあるアレンジメントだ。
 この豪華なテーブルや豪華な花瓶に比べると、あまりに一般的な花束。

「これ……」

「どうした?」

「覇王様にね、贈った花に、そっくりだなって思ったの」

「そうか……とても綺麗な花だと思ったよ」

「飾ってくれた人が……私と同じ趣味なのかしら? そういえばパレードで覇王がすごく手を振っていたわよ」

「へぇ? いい男だったかい?」

「すっごく遠くって、顔まではわからなかったの~! それにシィーンの方が絶対にいい男だって思うわ」

 マキラが細い指でシィーンの頬を撫でると、シィーンはその手に自分の手を重ねた。

「ふふ、それは嬉しいな」

「まぁ覇王の話は今はいいの! ごめんね、今は貴方の事だけ考えたいわ」

「覇王に嫉妬しなくてよかったよ……可愛いマキラ。さぁまずは、乾杯しよう」

「うん……そうね。素敵な偶然だわ」

「美しい恋人との夜に、乾杯」

「ふふ、素敵な恋人との夜に……乾杯」

 宝石があしらわれた、金の盃で乾杯した。
 冷たく華やかな果実酒は、辛口だが爽やかな炭酸が美味しい。
 遠い地域のお酒だという。
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