亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

 シィーンがリングケースを開けると、煌めく黄金の指輪が見えた。
 シィーンの瞳と髪と同じ、真っ赤な太陽のような宝石が輝いている。

 真剣な男の瞳に見つめられる。

 
「マキラ、愛している。……俺の妻になってほしい」


 優しく、そして揺るがない力強い言葉。
 激しい情熱が、胸を穿つ。
 
「……シィーン……」

 最上級の愛の言葉が、マキラを囲む。

 きっと人生で最高の瞬間。
 愛する男に結婚を申し込まれる……ロマンチックな時間。

 きっと指輪のサイズは、マキラの指にぴったりだ。

 指輪の美しさと、彼の真剣な瞳に……マキラは心が痺れる想いがした。
 甘美で太陽のように輝く、大きな愛。

 その全てを差し出され、感激しかない時間。
 それなのに、マキラの心は揺れ始める。

 指輪を……指にはめられない……。

「……マキラ、答えは……?」

 突然のプロポーズ。
 マキラは、リングケースを両手で包んだまま何も言えない。

 嬉しい、大好き、愛している。
 そんな言葉が頭をぐるぐると巡って、でも口から出せはしない。

 こんなに素敵な瞬間に……また自分の鎖が自分を締めてくる。

「……わ、私達……あの……まだ出逢ったばかりじゃない……?」

 自分で口から出して、最低だと思った。
 感激の涙は、嫌な冷や汗に変わる。

「これから知っていく。知ったとしても、お互いにより深く愛するだけさ。だから今伝えても、明後日伝えても、数カ月後に伝えても、未来は変わらない」

 こんな時でも、彼は揺るがない。
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