亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「此処は俺の家なんだ。此処で君と暮らしたい。何不自由させないよ」

 まさかこの豪華絢爛な屋敷が、シィーンの持ち家だとは。
 
「……こんな宮殿みたいな家が、貴方の家……?」

「そう。あの家で占いがしたいなら、此処から通えばいい。君を閉じ込めたりしたいわけではないんだ」

「……占いが生きがいなわけではないのよ……ただ生きるための手段で……」

「なんでも君がしたい事を応援するよ。何がしたい? 君の趣味を聞かせてくれ。武芸を磨きたいならそれもいいだろうし、仔虎達とのんびり暮らしてもいい。無理に肌を褐色にさせなくても、此処では君本来の姿で過ごしてくれていいんだ」
 
 何がしたい……だなんて考える余裕もなく生きてきた。

「シィーン……」

「実は……俺は今は少し休暇があるが、普段は仕事がとても忙しいんだ。だからあの家に会いに行くのが難しくなる。でも此処に君がいてくれれば、夜は一緒に過ごせるし何より励みになると思うんだ……」

 マキラの戸惑いを、シィーンは気付いている。

「わ、私は……そんな……甘やかされて、求められるような存在じゃないのよ」

「何を言っている。俺は君を見た時から、心を奪われ君に夢中なんだぞ」

「そ、それは……そんな風に言ってもらえて嬉しいけど……」

「そして君も俺を愛しているだろう。俺達はもう離れられない。ならば夫婦になるべきだ」

「私が……誰かの妻になるなんて」

「マキラ、愛している」

 愛が、この激しく強い愛が……嬉しいのに……今は……。

「シィーン……でも私……」

「俺を前にして、何を迷う……? マキラ」
< 61 / 76 >

この作品をシェア

pagetop