亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「さぁ俺の愛が伝わったなら、この話は終わりでいいよ。可愛い君を前にして、そろそろ我慢できないな」

「えっ……あんっ……シィーン……ここで……?」

「あぁ、このソファは寝心地が最高なんだ」

「きゃ……」

 プロポーズが有耶無耶になってしまったのに、怒るどころかシィーンはマキラを押し倒した。

「俺を愛しているだろう……? マキラ」

「すごく……愛してるの……」

「わかっている……それだけでいいんだ……」

 深い口づけに、溺れるようにマキラも目を瞑った。

 柔らかなローソファに、上質のシーツ。
 揺れるキャンドルの灯り、香る花――シィーンの吐息に、愛の囁き。
 マキラの戸惑いも受け止めて、シィーンはマキラを情熱的に愛した。
 戸惑いの涙は、快楽の涙になって、潤んだ瞳にシィーンは口づける。

「君は俺のものだ……」

 そして抱き上げられ連れて来られたのは、大理石のジャグジー。
 香油が香って、キラキラと煌めくたっぷりのお湯。
 彫刻が美しい大きな壁に守られ、天井は吹き抜けで満点の星空が見える。

 上質な石鹸で汗を流せば、褐色にした肌がマキラの本来の肌色になっていく。

「褐色の肌もいいが、マキラの本当の肌はすごく綺麗だ」

「……本当に?」

 肌での差別は禁止されているが、この土地に住みながら日焼けができない者はやはり特殊だ。
 遠い遠い異国の地の者だと……隠せずに伝えていることになる。

「当たり前だ。俺は世界中を見てきた。この世には様々な人種がいるが、全ての人間がそれぞれ美しい」

「世界中を……」

「綺麗だよ……すごく」

「……嬉しいわ……」 
 
 シィーンという男が、こういう男だというのはわかっている。
 何もかも受け入れて、何もかも肯定し、何もかも愛する……何故かそれがわかる。

 世界中を見た……。
 シィーンは軍の人間なのだろうか?
 それも相当な高い地位の……ハルドゥーン将軍様にも引けを取らない程の……?
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