亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

贅沢な時間

 
 次の日には、朝食が寝室前にワゴンで用意されていた。
 マキラがキングサイズのベッドで目を醒ますと、シィーンが微笑んだ。

「おはよう、マキラ。昨日の君も最高だったね」

「恥ずかしいわ……あなたもとても素敵だった……」

 愛し合う最中も、次の日も優しく労ってくれるが、さすがに処女だったマキラもシィーンが絶倫だということはわかる。

「さぁ、ハーブウォーターだよ。食事も持ってこよう」

「あ、私が……」

「君はそこにいて、ゆっくりしててほしい」

 ガウンを羽織ったシィーンが、それを運んできてくれる。
 美味しそうなパンにスープ、オムレツにベーコン、粥や麺までどんな希望にも合うように揃っている。

「やっぱり……使用人の方が沢山いるのよね」

「あぁ。でも最低限の世話だけにしてもらっているし、君が姿を見る事も見られる事もないよ。安心してほしい」

「こんな贅沢して、いいのかしら……」

「俺が君にしてあげたいんだ。あぁ……これは俺の今までの正当な報酬によるものだから、気にしなくていいんだよ。今まで使う暇も時間もなくってね」

「き、気になったのは、そういう意味じゃないわ! 私も少しでもお金を払った方がって思って……」

 シィーンが何か不正や悪いことをしているだなんて、思っていない。
 
「君のためなら、何でもしたいのにマキラは健気で可愛すぎるな……」

「だ、だって……」

「そんな君がとても愛しいよ。でも金のことなんか気にしないで俺に任せてくれればいい。さぁ! 温かいうちに食べよう。じゃあ、ほら俺に食べさせてくれよ。それでチャラでいいだろう」

 男性と付き合ったこともないマキラは、金を出してもらうのも、甘やかされるのも、慣れていない。
 でもシィーンは、そんなマキラの不器用さも受け止めてくれる。

「ふふ、あ~んしてほしいの?」

「そうだ。世界一可愛い君に、あ~んしてほしい。俺は粥が食べたいな。ふーふーして、あ~んだよ」

「ふふふ、承知しました。ふーふ……さぁ、あ~ん」
 
 今日も朝から、甘い時間だ。
 シィーンは逞しく精悍な男だが、マキラにわざとに甘えてくる仕草もマキラは愛しくて堪らない。
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