【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
マキラの災難
断ったにも関わらず、ハルドゥーンはマキラを訪ね扉の前で頼み事をしてくる。
「どうか少しの時間でも、姫の相談に乗ってあげていただけませんか」
「無理です」
「マキラ様……エリザ姫は大変お困りで……」
「帰ってください! お願い!」
マキラは、ハルドゥーンが最初自分の境遇を知っているのでは? 元王女を誘う罠? と思ったがそうではないらしい。
「マキラ様、どうかお願い致します。エリザ姫のワガママ……いえ要望が進まねば……若が……」
「私には無理です! 帰ってください!」
将軍の腹から出る張りの良い声は、そこら中に響き渡っていそうで怖い。
いつまでこの押し問答をさせる気!? とマキラは苛立つ、それでも負けない!
見えはしないだろうが、マキラは毛が逆立った猫のように威嚇し続けた。
「今日のところは……退散いたします」
虎将軍の彼の呟きが扉の向こうで聞こえた。
ハルドゥーンがエリザ姫の願いを叶えたい理由は、彼が忠誠を誓う若……つまり覇王のためという事か。
「まさか、覇王が婚約者を悩ませて婚約破棄されそうだとか……??」
覇王……婚約者の元帝国の姫……覇王の部下将軍……。
マキラにとっては、関わりたくもない人間達だ。
「そろそろ此処を離れる時かしら……はぁ」