亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

五日後の絶望(シィーン視点)


 五日後、シィーンが予定より早く宮殿へ戻った。
 しかし異変な雰囲気に気が付く。
 庭が荒れて、残った空気に殺気を感じる。

 戸惑い、うろたえ右往左往して人探しをしている使用人達。
 彼等が姿を見せている事が、既におかしい。

 出てこない二匹の仔虎。
 そして、姿の見えない愛しい恋人。

「なんだ、一体何があった……!」

 いつも冷静なシィーンがただならぬ雰囲気に、マキラへのプレゼントを落として庭を駆ける。

「説明しろ! 何事だ!!」

 シィーンが執事を呼ぶが、それより前に激怒したエリザ姫が現れた。 
 二人の侍女は土下座して、命乞いをしている。

「ガザルシィーン! 貴様ぁあああー!」

「エリザ! 何故ここにいる!?」

「ガザルシィーン!! あの遊女はなんだ!? 私に剣を向け逃げた!! 即刻に打ち首にしろ!!」

 一睡もしていないのか、髪は乱れ、唇は乾いて喚く。
 エリザは自分が犯した罪など考えもせず、一方的にシィーンを責め立てる。

「遊女だと……? まさか此処にいた女性のことか、紫色の髪の美しい女性だ」

 後ろの侍女が焦りながら首を縦に振る。
 それで悟ったシィーン。
< 77 / 79 >

この作品をシェア

pagetop