【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
五日後の絶望(シィーン視点)
五日後、シィーンが予定より早く宮殿へ戻った。
しかし馬車を降りてすぐ、異変な雰囲気に気が付く。
庭が荒れて、残った空気に殺気を感じた。
戸惑い、うろたえ右往左往して人探しをしている使用人達。
彼等が姿を見せている事が、既におかしい。
出てこない二匹の仔虎。
そして、姿の見えない愛しい恋人。
「なんだ、一体何があった……!」
いつも冷静なシィーンが、屋敷のただならぬ雰囲気に、マキラへのプレゼントを落として庭を駆ける。
「説明しろ! 何事だ!!」
シィーンが執事を呼ぶが、それより前に激怒したエリザ姫が現れた。
二人の侍女は土下座して、命乞いをしている。
「ガザルシィーン! 貴様ぁあああー!」
「エリザ! 何故ここにいる!?」
「ガザルシィーン!! あの遊女はなんだ!? 私に剣を向け逃げた!! 即刻に打ち首にしろ!!」
一睡もしていないのか、髪は乱れ、唇は乾いて喚く。
エリザは自分が犯した罪など考えもせず、一方的にシィーンを責め立てる。
「遊女だと……? まさか此処にいた女性のことか、紫色の髪の美しい女性だ」
後ろの侍女が焦りながら首を縦に振る。
それで悟ったシィーン。