亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
もうすぐ開催される生誕祭。
年に一回の大きな祭りだ。
覇王のパレードが盛大に行われるので、世界中の人々が観光にやってきて街は活気づく。
そのせいで大通りの人気酒場が混んでいるらしく、普段はそこそこの人数で賑わう店内が異様に混みだしてきた。
「今日は静かに飲みたかったのに……こんなところまで覇王のとばっちりが……まぁ仕方ないわね。帰ろう」
会計をしようとした、その時。
下品な笑い声をあげていた男の一人が、若い女性店員さんに絡み始めた。
最初は店員さんも苦笑いしながら避けようとしたが、男二人が手を掴み自分達の膝の上に座らせようとする。
彼女が小さな悲鳴をあげた。
「やめなさい!」
マキラはすぐに、男達から彼女の手を引いて離し背に隠す。
「なんだぁ? ババア!!」
地味な身なりで顔を隠しているし、相当に酔っている男に年配呼ばわりされてしまった。
しかしそんな事は構わない。
「迷惑行為よ。このお店はそういうお店じゃないわ。そういう事がしたいのなら、そういうお店へ行きなさい」
「生意気なババアだな!!」
女将が慌てて厨房から出てきた。
マキラは『心配するな』という意味のウインクをする。
そして男達には、また鋭い視線を向けた。
「この店に迷惑がかかるといけないから、私が案内してあげる」
「なんだと!?」
男が五人。
傭兵崩れのようで、帯剣している。
一人の男が立ち上がって、マキラに掴みかかろうとしたが、後ろの男たちは楽しそうに止めた。
「いいじゃねえか……お外でゆっくり案内してもらおうぜ」
男の一人がベロリと舌を出す。