【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「しかし~~~あぁ、なんていう運命の再会だろうか! エフェーミアが生きていてくれて嬉しいよ」

「ウィン兄様も無事でいてくれて嬉しいです。でも私だってよくわかりましたね」

「もちろんだよ、顔を半分隠していても君の高貴さも可憐さも隠せていない……僕達は婚約者なんだから」

 マキラが10歳の時に決められた婚約者で、ウィンタールはその時20歳だった。
 ただの形式的な婚約で、食事会や茶会は何度かしたが、二人きりになった事も触れた事も当然にない。

「こ、婚約者と言っても、もう昔の話で……ウィン兄様だってもう既に御結婚されているのでは?」
 
 マキラが20歳なのだから、今はもう30歳になっているはずだ。

「いや……僕は君が生きている希望を胸に抱いて、君を探すために吟遊詩人として全世界を旅して生きてきたんだよ」

「えっ……ウィン兄様が吟遊詩人!? わ、私を探すために……!?」

「あぁ……運命の再会だよ……エフェーミア」

 マキラの額に、嫌な汗が浮かぶ。

「……も、申し訳ないのですが……私はウィン兄様の婚約者という自覚はなく……そんな、あの……すみません。私を探しているだなんて……考えた事もありませんでした……」

「ありゃありゃ、つれないねぇ」

「申し訳ありません。日々を生きることに精一杯で……それに私は……恋人も……おりましたので……」

 純潔ではないことを、伝えればウィンタールも引き下がるだろう。
 冗談っぽく笑っているのが救いだが、ゾクゾクと寒気がしてくる。

「はぁんそっかぁ~わかるよ。エフェーミア、君だってあの戦争をくぐり抜けて生きてきたんだ。誰かと寄り添うことだってあっただろう。でも今、君に恋人はいないだろう? 女の一人旅を許す男などいるものかぁ~」

 『恋人はいない』
 心に突き刺さる言葉。

「……確かに、私は今一人です……」

「だろう? ならば問題ないじゃないか」

「で、ですが!! 私はこれからも一人で生きていくつもりです。結ばれることはなくても……私の心には死ぬまで……一人の男性がいるのです……」

 口に出すと、また痛む心。
 結ばれなくとも、愛する人はこの世でただ一人……。

 逃げてしまった……引き千切ってしまった愛……。
 それでも、彼だけをずっと愛し続けたい。
 それがマキラの想いだった。
 シィーンに一夜限りと伝えた時も、純潔を捧げて、ずっと胸にこの恋を抱いて生きていこうと思っていた。
 
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