【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
蘇る愛
マキラの本当の名前を、シィーンは知っていた……?
驚きで、涙が引いて、力が抜けるのを感じる。
「姫、夜風が冷えてきた。君の身体が心配だ。まずは帰ろう、俺達の家に」
「シィーン……」
「そこで、ゆっくり話をしよう」
ハルドゥーン達には、もう指示を出し終えているのだろう。
また軍神のような姿に身を変えたシィーンに、マキラは抱かれて宮殿に戻ってきた。
人の足で一ヶ月以上かかる距離を、なんと彼はドラゴンのような聖獣に跨り、空を飛び数十分で戻ってきたのだ。
魔法が存在する世界でも、こんな力を持つ者は伝説でしか聞いたことがない。
城を飛び越え、月夜に照らされた美しい宮殿が見えた。
シィーンが我が家として使っている屋敷は、ただの一角だった事が見下ろしてわかった。
何もかもが規格外……。
でも、今は自分の正体を何故知っているのか……そればかり気になる。
「さぁ、このまま寝室へ降りよう」
二人が愛を語りながら愛し合ったシィーンの寝室。
バルコニーから入って、マキラを大きなローソファに優しく降ろしてくれた。
シィーンの姿は、いつもの彼に戻る。
「マキラ、空の旅は怖かったかい?」
先ほどの名を忘れたように、シィーンはマキラと呼ぶ。
でも、聞き間違いではなかった。
どうして……? 知っていたの……?
動揺しているマキラの頬を、シィーンは撫でた。
「君の失踪のやり方が本当に上手くて……俺は、この力を持ってしても君を探せないのかと……産まれて初めて自分が無能なのかと思ったよ。心配した……この一ヶ月、心が張り裂けてそうで……こんな辛い想いは初めてだった」
辛い顔をするシィーン。
覇王はこの広い世界で、マキラを探し出そうとこの一ヶ月、尽力していたのだ。
私なんかのために、そんな顔しないで……とマキラは下を向く。