【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
「俺が覇王だから愛せないのか?」
「……愛せない……違う……愛されては、いけないの……」
「何故だ……」
「貴方が私なんか愛してはいけないのです」
「君の国を守れなかったからか、エフェーミア姫」
やはり、シィーンはマキラがエフェーミアだと知っている。
「……何故……知っていたの……? わかっていて……近づいたの?」
「あぁ、わかっていた。だから酒の席に誘ったんだ。君と一緒にいたくてな」
「……それは……何か……私を利用するつもりで……?」
初めて会った時から、気付いていた……?
まさか、とマキラは驚く。
「違うよ。俺はガキの頃に、生まれて初めて可愛いなって思った女の子がいたんだ」
『は?』となるような、予想外の言葉。
「な、なによそれ!」
思わず、叫んでしまったマキラをシィーンは微笑んで抱き締めた。
「その女の子に似ているな~って思ったら、やっぱり本人だったんだ」
「え?」
「エフェーミア姫が、俺の初恋さ。毒野原で野垂れ死にしそうになった時に助けてもらって、姫のランチを頂いた」
「えっ……えっ……?」
「女の子の優しい笑顔にドキリとしたのは、初めてだった。女神かと思ったんだ! 餓死寸前に食べたココナッツケーキも、ゆで卵も最高に美味かったな。君がいなかったら俺達みんな死んでたよ」
マキラの脳裏に蘇る記憶。
魔草は呪術の材料になるので、マキラはランチを持ってよく採取に出かけていた。
倒れた一行を見つけて、慌てて助けた。
侍女が危険だと言っても、マキラは彼等の治療をした。
水を飲ませて、ランチのパンもココナッツケーキも食べさせて、お肉も、ゆで卵も全部食べさせた。
彼らは目指す先がある旅人だと言って、キラキラした瞳で礼を言ってボロボロの姿のまま去って行った。
でもその姿は、太陽のようで……真っ赤な髪と瞳が……煌めいて……。
太陽の子だと思った――。
マキラの脳裏にハッキリと思い浮かんだ、男の子の顔……あれが……シィーン??
「わ、私が……エフェーミアだと、どうして確信できたの?」
「ベルト剣を扱える女性など、そうそういないしな。占い師という仕事。君の肌の色や……何より可愛い笑顔がそのままだった。今も昔も変わらない、すごく可愛くて綺麗だ」
シィーンは、子供の頃と変わらない笑顔で言った。