【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
「……そ、そんな……」
「エフェーミア姫は俺の憧れで、初恋の姫様だ。ずっと心に残っていたよ。でも……君は俺など覚えていないよね」
「覚えてるわ……草原で会った太陽の子……。あの時の……彼が……貴方なの……? ココナッツケーキを美味しいっていっぱい食べてくれたの……」
「覚えていてくれたのか! あらからココナッツケーキは、大好物だ。……俺達の出逢いは、まさに運命だよな」
「運命……」
まだ何も知らない頃の無垢な少女と……世界を救うために冒険を始めたばかりの少年。
出逢うはずもない二人が、出逢っていて……そして運命の再会を果たしていた。
先読みのできるマキラですら、予想できなかった運命。
「エフェーミア姫……。ずっと御礼を言いたかったが、あまりに目まぐるしい日々で……世界統一を果たせば会いに行けると思ってがむしゃらに頑張った……。なのに統一前に、君の国が滅ぼされてしまった……」
祖国が滅亡しなかったなら……覇王を前にして、またマキラに亡国の怨念が伸し掛かる。
沢山の想いが絡み合った涙が、想いが溢れ出るマキラ。
「君の国が攻め込まれた時、同時に俺の国にも帝国の同盟国が攻め込んできて……間に合わなかった……それに関しては、心から申し訳ないと思う。助けられなかった多くの人々は、俺を恨んでいることだろう……」
シィーンが、一言そう漏らした。
苦渋に満ちた声と、顔だった。
あぁ、彼は本当に覇王なんだ……とマキラは思う。
この世界に起きた戦乱を、彼は全て背負っている。
マキラが押しつぶされそうになる自国の怨念の何倍も何倍もの、世界中の人々の恨み辛みも何もかも背負っているのだ。
彼の心の傷から溢れた血は、どれだけのものか。