異世界で炎上した乙女ゲー続編ヒロイン、結婚当日に友人王女が婚約者を寝取って婚約破棄なので諦めてた初恋の隣国王弟の攻略に戻ります
結婚当日、花婿が来ない
いよいよ婚儀の当日。ついにこの日が来てしまった。
濃いミルクティ色の髪をアップスタイルにまとめ、エステイア伯爵家に伝わるダイヤと真珠のティアラを。
普段は領内の視察や瘴気対策で動くことが多いから化粧をしても簡単に済ませることが多かったが、今日ばかりは侍女が隙のないしっかり艶メイクを施した。
美しいウエディングドレス姿のエステイアに、だが褒めるのは幼馴染みたちと使用人たちのみ。
父テレンスも娘の晴れ姿を見に来たが、良いとも悪いとも言わなかった。
あまり娘に関心のない父親だ。てっきり鼻で笑うかと思いきや、意外なことに無言のままで、表情のない顔でじっと純白のドレス姿のエステイアを見ていた。
「さあ、エステイア。式場へ行くぞ」
屋敷から会場の祭儀場までは父テレンスがエスコートする。
既に正装に着替えていたカーティスやセドリックは先に式場へ向かい、花嫁と花婿を待つことにした。
花嫁エステイアが会場入りしてから、随分と時間が経った。
ところが時間になっても花婿が来ないのだ。
三十分ほど経過したとき、普段は無造作な赤茶の髪を正装用に後ろに撫で付けたカーティスが、何やら隣のセドリックと言葉少なに会話しているのが見えた。
カーティスはそのまま式場を出て行った。花婿アルフォートの様子を見に行ってくれたようだ。
参列者たちが痺れを切らし始めた一時間後、外から騒がしい複数人の怒鳴り声が聞こえてきた。
伯爵家の騎士たちの声だ。
「花婿を連れてきた。だが残念だが婚儀は中止だ、見ろ!」
カーティスは確かに花婿アルフォートを連れてきた。
だが。
会場内の参列者たち、特に女性客から悲鳴が上がる。
現国王と同じ金髪青目の美男子なのは変わらず。
ところがパラディオ伯爵家で用意していた花婿用の正装を着ていない。
着ていないどころか、いや文字通り〝着ていない〟のだ。
全裸でないのが幸い程度の下着姿で、後ろ手に騎士に両腕を拘束されている。
女性たちが悲鳴を上げた理由は見てすぐわかった。
首筋や胸元、腕などに赤い斑点がいくつもある。
何なのかは、同じく隣に引きずられてきた女性を見れば一目瞭然だ。
こちらも半裸の下着姿のようだが、配慮されてか部屋着用のガウンを着せられている。
だが肌けた胸元にはアルフォートと同じような赤い斑点、キスマークが無数に刻まれていた。
「アルフォート、まさかここまで愚かとは……」
結婚当日、この男は婚儀も忘れて浮気相手とベッドでお楽しみだったのだ。
濃いミルクティ色の髪をアップスタイルにまとめ、エステイア伯爵家に伝わるダイヤと真珠のティアラを。
普段は領内の視察や瘴気対策で動くことが多いから化粧をしても簡単に済ませることが多かったが、今日ばかりは侍女が隙のないしっかり艶メイクを施した。
美しいウエディングドレス姿のエステイアに、だが褒めるのは幼馴染みたちと使用人たちのみ。
父テレンスも娘の晴れ姿を見に来たが、良いとも悪いとも言わなかった。
あまり娘に関心のない父親だ。てっきり鼻で笑うかと思いきや、意外なことに無言のままで、表情のない顔でじっと純白のドレス姿のエステイアを見ていた。
「さあ、エステイア。式場へ行くぞ」
屋敷から会場の祭儀場までは父テレンスがエスコートする。
既に正装に着替えていたカーティスやセドリックは先に式場へ向かい、花嫁と花婿を待つことにした。
花嫁エステイアが会場入りしてから、随分と時間が経った。
ところが時間になっても花婿が来ないのだ。
三十分ほど経過したとき、普段は無造作な赤茶の髪を正装用に後ろに撫で付けたカーティスが、何やら隣のセドリックと言葉少なに会話しているのが見えた。
カーティスはそのまま式場を出て行った。花婿アルフォートの様子を見に行ってくれたようだ。
参列者たちが痺れを切らし始めた一時間後、外から騒がしい複数人の怒鳴り声が聞こえてきた。
伯爵家の騎士たちの声だ。
「花婿を連れてきた。だが残念だが婚儀は中止だ、見ろ!」
カーティスは確かに花婿アルフォートを連れてきた。
だが。
会場内の参列者たち、特に女性客から悲鳴が上がる。
現国王と同じ金髪青目の美男子なのは変わらず。
ところがパラディオ伯爵家で用意していた花婿用の正装を着ていない。
着ていないどころか、いや文字通り〝着ていない〟のだ。
全裸でないのが幸い程度の下着姿で、後ろ手に騎士に両腕を拘束されている。
女性たちが悲鳴を上げた理由は見てすぐわかった。
首筋や胸元、腕などに赤い斑点がいくつもある。
何なのかは、同じく隣に引きずられてきた女性を見れば一目瞭然だ。
こちらも半裸の下着姿のようだが、配慮されてか部屋着用のガウンを着せられている。
だが肌けた胸元にはアルフォートと同じような赤い斑点、キスマークが無数に刻まれていた。
「アルフォート、まさかここまで愚かとは……」
結婚当日、この男は婚儀も忘れて浮気相手とベッドでお楽しみだったのだ。