異世界で炎上した乙女ゲー続編ヒロイン、結婚当日に友人王女が婚約者を寝取って婚約破棄なので諦めてた初恋の隣国王弟の攻略に戻ります
黒ドラゴン出現!
パラディオ伯爵家の婚約破棄騒動は当事者のアルフォートと、不貞相手のサンドローザ王女、二人とも居なくなってしまったことで後味の悪い終わりとなってしまった。
「あとは王家との交渉。はあ、気が重いわ」
元凶のアルフォートとサンドローザ王女だけで何とかしてほしい。
「エステイア。このまま居ても役立たずだろうし、俺は帰るよ」
「私は預かった手紙を持って王都で国王陛下に謁見を……」
その日の夕食の席でカーティスとセドリックから、明日の朝出立すると聞かされた。
「そう。……寂しくなるわね」
エステイアはこのパラディオ伯爵家で独りになる。
この日はもう食事も味気なくて食べた気がしなかった。
「セドリックも、元気で。こちらが落ち着いたら手紙を書くわ」
「ああ。待っている」
翌朝、カーティスやセドリックと別れを惜しんでいるところに、再び王都からサンドローザ王女の婚約者、近衛騎士のノア公爵令息ヒューレットが単騎でやってきた。
「ヒューレット君! 申し訳ないわ、実はサンドローザは勝手に出奔してしまって」
「その話は後です、エステイア嬢! カーティス君、セドリック君もまだこちらに居ましたか。アヴァロン山脈に異変が!」
「え?」
軍装姿のヒューレットはいつも整っているはずのヘーゼルブラウンの髪を乱して息も荒い。
途中で異変を察知して無理に馬を全速力で走らせてきたという。
パラディオ伯爵家は山脈を背にする形で屋敷が立っている。
セドリックたちを見送るためエントランスにいたエステイアは、自分の風の魔法でその場にいた者たちを家人たちも含めて浮き上がらせ、屋上へと上がった。
「うそ、あれ……」
「黒竜か!」
プリズム王国と他国を隔てる第山脈の一番高い山の上空を巨大な黒いドラゴンが旋回している。
「しかも瘴気で山頂が見えねえ……」
黒いモヤのような瘴気は少しずつ山を降りて人里、エステイアのパラディオ伯爵領や隣のザックス辺境伯領を汚染しつつある。
「あのドラゴンが瘴気の発生源なのは間違いありません。今ならドラゴンを討伐すれば瘴気被害は最低限で抑えられるはず」
ヒューレットの指摘はもっともだ。
そのまま全員、屋敷の中に入って執務室で各自、必要な各所に連絡用の手紙を書いたり伝令を飛ばしたり慌しく動いた。
「王都に報告を。パラディオ伯爵家は騎士団と兵団を準備、いつでも出発できるようにしておいて。私は先に現地を確認してくるわ」
「ご当主様、お一人では危のうございます!」
家令や執事が慌てて止めてきた。けれどエステイアは引かない。
「亡くなったお母様ほどじゃなくても、私だって戦える。大丈夫、危険なところまでは近づかないから。せめて瘴気避けの魔導具ぐらい設置してこないと」
単独で向かうつもりだったエステイアだが、男たちも一緒に同行すると次々申し出てきた。
「お前ひとりを向かわせるわけにはいかない。エステイア」
「セドリック。心強いわ」
(出発の前に私からも隣国に手紙を出しておきましょう。アヴァロン山脈に瘴気が溢れたら彼の国だって危ないもの。あちら側でも備えておいてもらわないと)
「当然俺も行く! ザックス辺境伯でも騎士団を山のふもとで待機するよう指示しておいたぜ!」
「助かるわ、カーティス」
(元々、辺境伯はこういうときのための一族。フットワークも軽いでしょうし背後は安心ね)
さて、サンドローザ王女の婚約者のヒューレットはどうするのか?
彼は近衛騎士、つまり王家の直属の騎士だ。さすがに王都から離れたこの地で勝手な行動はできないはずだった。
だがヒューレットは青ざめた顔でとんでもない情報をもたらしてきた。
「先ほど、街を探索させていた部下が報告に戻ってきました。サンドローザ王女らしき人物がアヴァロン山脈に向かったところを目撃した複数の証言があったと」
「彼女、アルフォートを探しに飛び出してるんだけど……まさか、お父様とアルフォートまでアヴァロン山脈に?」
「私もあなたたちに同行することになりそうです。エステイア嬢」
(貧乏くじ引いたわね。ヒューレット君)
結果、エステイア、セドリック、カーティス、ヒューレットの四人で急遽アヴァロン山脈に登ることが決定した。
登山装備はパラディオ伯爵家の騎士団のものを使い、携帯食や水筒、野営用設備は手分けして持参する。
(お父様からの魔力ポーションも)
乙女ゲームでなら99個までは自動でストックできたがここは現実世界。
背負うリュックやウエストポーチなどに詰め込めるだけ詰めて持っていくことにした。
「あとは王家との交渉。はあ、気が重いわ」
元凶のアルフォートとサンドローザ王女だけで何とかしてほしい。
「エステイア。このまま居ても役立たずだろうし、俺は帰るよ」
「私は預かった手紙を持って王都で国王陛下に謁見を……」
その日の夕食の席でカーティスとセドリックから、明日の朝出立すると聞かされた。
「そう。……寂しくなるわね」
エステイアはこのパラディオ伯爵家で独りになる。
この日はもう食事も味気なくて食べた気がしなかった。
「セドリックも、元気で。こちらが落ち着いたら手紙を書くわ」
「ああ。待っている」
翌朝、カーティスやセドリックと別れを惜しんでいるところに、再び王都からサンドローザ王女の婚約者、近衛騎士のノア公爵令息ヒューレットが単騎でやってきた。
「ヒューレット君! 申し訳ないわ、実はサンドローザは勝手に出奔してしまって」
「その話は後です、エステイア嬢! カーティス君、セドリック君もまだこちらに居ましたか。アヴァロン山脈に異変が!」
「え?」
軍装姿のヒューレットはいつも整っているはずのヘーゼルブラウンの髪を乱して息も荒い。
途中で異変を察知して無理に馬を全速力で走らせてきたという。
パラディオ伯爵家は山脈を背にする形で屋敷が立っている。
セドリックたちを見送るためエントランスにいたエステイアは、自分の風の魔法でその場にいた者たちを家人たちも含めて浮き上がらせ、屋上へと上がった。
「うそ、あれ……」
「黒竜か!」
プリズム王国と他国を隔てる第山脈の一番高い山の上空を巨大な黒いドラゴンが旋回している。
「しかも瘴気で山頂が見えねえ……」
黒いモヤのような瘴気は少しずつ山を降りて人里、エステイアのパラディオ伯爵領や隣のザックス辺境伯領を汚染しつつある。
「あのドラゴンが瘴気の発生源なのは間違いありません。今ならドラゴンを討伐すれば瘴気被害は最低限で抑えられるはず」
ヒューレットの指摘はもっともだ。
そのまま全員、屋敷の中に入って執務室で各自、必要な各所に連絡用の手紙を書いたり伝令を飛ばしたり慌しく動いた。
「王都に報告を。パラディオ伯爵家は騎士団と兵団を準備、いつでも出発できるようにしておいて。私は先に現地を確認してくるわ」
「ご当主様、お一人では危のうございます!」
家令や執事が慌てて止めてきた。けれどエステイアは引かない。
「亡くなったお母様ほどじゃなくても、私だって戦える。大丈夫、危険なところまでは近づかないから。せめて瘴気避けの魔導具ぐらい設置してこないと」
単独で向かうつもりだったエステイアだが、男たちも一緒に同行すると次々申し出てきた。
「お前ひとりを向かわせるわけにはいかない。エステイア」
「セドリック。心強いわ」
(出発の前に私からも隣国に手紙を出しておきましょう。アヴァロン山脈に瘴気が溢れたら彼の国だって危ないもの。あちら側でも備えておいてもらわないと)
「当然俺も行く! ザックス辺境伯でも騎士団を山のふもとで待機するよう指示しておいたぜ!」
「助かるわ、カーティス」
(元々、辺境伯はこういうときのための一族。フットワークも軽いでしょうし背後は安心ね)
さて、サンドローザ王女の婚約者のヒューレットはどうするのか?
彼は近衛騎士、つまり王家の直属の騎士だ。さすがに王都から離れたこの地で勝手な行動はできないはずだった。
だがヒューレットは青ざめた顔でとんでもない情報をもたらしてきた。
「先ほど、街を探索させていた部下が報告に戻ってきました。サンドローザ王女らしき人物がアヴァロン山脈に向かったところを目撃した複数の証言があったと」
「彼女、アルフォートを探しに飛び出してるんだけど……まさか、お父様とアルフォートまでアヴァロン山脈に?」
「私もあなたたちに同行することになりそうです。エステイア嬢」
(貧乏くじ引いたわね。ヒューレット君)
結果、エステイア、セドリック、カーティス、ヒューレットの四人で急遽アヴァロン山脈に登ることが決定した。
登山装備はパラディオ伯爵家の騎士団のものを使い、携帯食や水筒、野営用設備は手分けして持参する。
(お父様からの魔力ポーションも)
乙女ゲームでなら99個までは自動でストックできたがここは現実世界。
背負うリュックやウエストポーチなどに詰め込めるだけ詰めて持っていくことにした。