転生先は悪妻~旦那様はお呼びじゃないの~

第1話 最悪なスタート

 転生先を選べるのなら選びたいし、時間軸もまた然り。

「エミリア。しばらく不便をかけるが、分かってほしい」

 目の前の男が何を言っているのか、さっぱり理解できなかった。
 重苦しい空気。いかにも執務室といった感じだ。

「君はザイーリ公爵夫人なのだから」

 夫人?

 思わず辺りを見渡した。が、他に夫人と呼べるような人物はいない。つまり、私のことを指しているらしい。
 さらに言うと、目の前に座っている、この男は誰なのだろう。

 まさか旦那ってことはないわよね? もしかして私、怒られている最中?

「申し訳ありませんが、もう一度言ってもらえませんか?」

 怒鳴られる覚悟で聞くと、男は勢いよく顔を上げた。驚いた表情なのは残念だが、なかなかのイケメン。
 けれど、魅力には欠けた。たとえるなら、そうだなぁ。なよなよした男。あからさまに気が弱そうだと思った。

 うん。私のタイプじゃない。
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