転生先は悪妻~旦那様はお呼びじゃないの~
 マジか……。面倒臭いなぁ。正直、こんな男に興味なんてないし。愛人さんが来るならいっそう、引き取ってくれた方がマシ。

 あぁ、でもそしたら私は? こういう場合って実家に帰るんだっけ? それはそれで面倒だなぁ。

 愛人に旦那を取られて、出戻りました。なんて娘を快く迎えるかしら。
 下手をすると、恥さらしとか言われて追い出されるか。もしくは、再び嫁がされるか。その場合、決まってロクな相手じゃなさそうね。
 なにせ、出戻り女を引き取ってくれるなんて、そんなできた男、物語の中だけよ。

 ここは、ザイーリ公爵だったっけ? 私が快適に過ごせるように、ちょっと利用させてもらおうかしら。
 そうね、例えば仕事、とか。させてもらえると有り難いんだけど。

 私は一つ頷くと、再び金髪男と向き合った。案の定、驚いた顔をしている。

「先ほど、私のことを夫人と言ったわよね。貴方のお仕事は?」
「な、何を言っているんだ!」
「妻が旦那の仕事を聞いて何が悪いことでも?」

 怒鳴れば黙るとでも思っているのかしら、この男。私は笑顔で尋ねた。
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