転生先は悪妻~旦那様はお呼びじゃないの~
「……いえ、ありません」
「じゃ、答えて」
「はい。まずは国の仕事で――……」
「あー、国は良いわ。それは貴方がやって。他は?」

 状況は分かっても、ここがどこだか分からない以上、国の仕事を聞いたところで、私に出来ることはないと思う。
 そもそも、愛人が身籠ったという理由で、屋敷に引き取りたいと言える国だ。
 男尊女卑とまではいかなくても、それに近い環境なのだろう。一応、妻である私に了解を取るのだから。

 ならば、やはりここは見知らぬ“ザイーリ公爵夫人”の実家よりかは、ここにいる方がいいのかもしれない。

「あとは、領地と商会を幾つか経営して……います」
「そっちは私がやるわ」
「やるって、君がか?」
「えぇ。その代わり、貴方は愛人さんについていてあげて。そこまで仕事をしていたら、時間が取れないでしょう。向こうは妊婦さんなのだから、色々と不安だと思うのよ。さらに慣れない環境。さぞ心細く思うでしょうね」

 私は目を閉じ、手を口元に持っていった。俯くように見せれば、それらしくも見えるだろう。
 本音は、「目障りだから、彼女さんのところにさっさと行けば」である。けれどここは、相手の神経を逆なでしてはいけない。
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