転生先は悪妻~旦那様はお呼びじゃないの~
 厳密に困るのは、雇われている側である使用人の立場だ。領地はともかく、商会の情報を他に売るような使用人は危険でしかない。
 私は念を押すように言うと、老齢の男性は心得たように頷いた。

「奥様の仰る通りです。コリーを連れて行け」

 その一言で従える、ということは、この男性は執事かしら。

「とんだお目汚しを。以後、目を光らせますのでご安心ください」
「いいえ。それよりも、あのメイドみたいに反対しないの? 悪妻である私が領地と商会を経営するなんて、気でも触れたのかって」
「そ、そのようなことは。間違っても、このロルフは致しません」

 しかし、他の使用人たちはどうだろうか。あのメイド、コリーが言っていた『悪妻』が経営など。さらに愛人がやってくるという事態だ。
 どちらにつこうか判断しているのだろう。

 まぁ、私は追い出されないようにするだけ。子供が生まれるまでには時間がかかる。それまでに次の算段をしておかないと……。
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