病んじゃう私と幻覚JK

埋まる変わる私

「もう薬には頼らない！」
沙夜は全ての薬を握り、窓の外へと投げ捨てた。それから二週間、沙夜は学校を欠席した。

ある日、桃香のグループがクラスで談笑をしていると、クラスのドアが力強く引かれた。
音の鳴る方に皆の視線が集まる。
そこには、勇ましい表情をしている沙夜が立っていた。
「あーら、沙夜ちゃん。元気だった？」
桃香が、挑発する。
沙夜は無視して、自分の席へと向かう。
席へ向かう途中、桃香グループの兵士達が口々に自分への矢を放つ。
全ての矢をかわした沙夜は、椅子に座った。
「おい、無視してんじゃねーよ！」
腹を立てた桃香が、座っている沙夜に叫ぶ。

すると、沙夜が突然渾身の力で、机を蹴り飛ばした。
普段大人しい沙夜の、意外な行動に皆が呆気にとられていると、沙夜は桃香のグループに近づいていった。そして、桃香の顔に自分の顔を近づけた沙夜は
「なんか文句ある？」
と、ドスの利いた声で凄んだ。
間を空けずに、桃香のグループを一人ずつ指さすと
「お・ま・え・ら・ま・と・め・て」
沙夜は、右手の親指を下に向け、続けてこう言った。
「地獄へ堕ちろ。」
沙夜が出す、覇気の凄さに萎縮した桃香は
「まっ、許してあげる。ねぇ、みんな！」
その言葉を皮切りに、緊張の糸が切れたように、クラス全員が各々談笑する。
沙夜が自分の席に戻ると、久美が小声で
「かっこいいじゃん。」
と囁いた。

それからの高校生活は、沙夜が"彼女"の姿を見ることはなかった。