病んじゃう私と幻覚JK

信じちゃう私

私は占いが好きだ。
優柔不断な私の道しるべになってくれる。
占いには「星占い」「四柱推命」「手相」「タロット」「水晶占い」「姓名判断」色々あるが、私が今ハマっているのはタロット占いだ。今日も放課後久美と占いの館へ遊びに行く。"占いの館"といっても雑居ビルの二階に入っている個室のブースだ。

慣れた様子の久美に連れられて、雑居ビルの階段を上ると占い師に手招きされ、入室した。沙夜がここに来るのは二回目だ。
占い師は艶やかで上品な顔出ちをしている。
(卑弥呼が存在していたらこんな顔なんだろうな。)

「こんにちは。今日はどんなことを占おっか?」
占い師が高そうな指輪を弄りながら質問する。
「うーん。どうしよ。」
優柔不断な沙夜が悩んでいると、久美が横槍を入れてきた。
「やっぱ恋愛でしょ!」
「じゃあ、それで!」
(たしかに失恋したばかりだし、ちょうど良いか...。)
「オーケー。じゃあ始めるね。」
占い師が、タロットカードを広げて徐に混ぜる。その後、広げたカードを集め山札にしてカットしていく。そして、1枚ずつ表にして置いていく。
「あー、良い話と悪い話あるけど、どっち先にする?」
占い師が眉を顰め、沙夜に訊ねる。
ネガティブ思考な沙夜は、こういう時必ず悪い方が気になる。
「悪いほうで!」
沙夜からの注文を受けると占い師が続ける。
「高校生活中は彼氏諦めた方が良いかもね。」
話の内容とは裏腹にポップな言い方をした占い師は、矢継ぎ早に話す。
「でも大学で良い人できるよ!これが良い話!」
沙夜が話の内容を頭で整理しきる前に、隣にいた久美が喜ぶ。
「沙夜良かったじゃん!」
自分より嬉しそうな久美に苦笑しながら、沙夜も安堵する。
「じゃあ、次は久美ちゃんの番だけど、隣のブースに行ってくれる?」
占い師が提案する。
「えー。なんで沙夜と一緒じゃないの。」
ブツブツと不満を言いながら、久美が隣のブースへ移動する。久美だけ隣に移ったことを、沙夜も不思議に思った。
久美が居なくなったことを確認した占い師は、沙夜に顔を近づけ、小声で話す。
「私、人相学もやってるんだけど大丈夫?」
「大丈夫って何がですか?」
心当たりのない沙夜は、首を傾げる。
「詳しくは言わないけど、頼ってる物あるよね?」
(えっ、まさか分かるわけないよね...。)
薬のことが頭に浮かんだ沙夜は、動揺を隠せない。占い師は続ける。
「それ辞めないと、20代で命に関わるかも。」
「えっ...。何か対処法は無いんですか?」
必死な沙夜の表情を見て、占い師は手を握り、優しい笑顔で返す。
「何かあったらまた来て。私がついてるから。」
占い師の包み込むような手の温もりを感じた沙夜は、涙を浮かべた。
「ありがとうございます。」

久美と合流した沙夜は、雑居ビルを出た後も、占い師に言われた言葉が、一日中頭の中で反芻していた。
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