婚約破棄される令嬢の心は、断罪された王子様の手の中。
華やかな夜会が催された、城の大広間の中。
「ミレイユ・アレイスター! 君とは……婚約破棄だ! それでも構わないのか!?」
私の婚約者であるウィスタリア王国王太子、ジェレミア・バートレットは高らかにそう宣言した。
あら。さっきまで彼と一緒に居たご令嬢は、何処にいったのかしら。私はその時に冷静に思った。
私たち二人は婚約者同士なのに、ここ数年、一緒に夜会の会場へと入場することもなかった。
私はいつも一人。
彼が違う誰かと一緒に楽しそうに笑い合っていても、何も見て居ない振り聞こえない振り。
軽やかな音楽は止まり、周囲の貴族たちは何事かとざわめいて、不穏な空気を放つ私たち二人から離れ、広い会場の中で、ぽっかりと私たちだけの空間が出来ていた。
「あら……ジェレミア。それは、こちらの台詞ですわ。それでも、構わないのですね?」
これまで大人しく何も言わなかった婚約者が、ここで強気に出るなど思ってもいなかったのか、ジェレミアは言葉に詰まり、これから何を言うべきか悩んでいる様子だった。
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