人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 魔術書を読み漁り、師とも呼ぶべき家庭教師に、何度も教えを()いに行っている姿を見た。

 その時の表情は、幼い時よりも硬く、険しくなっていた。

「私はただ、リゼットの重荷を、枷を外してやりたかっただけなんだ」

 婚約を破棄すれば、リゼットはただのバルデ伯爵令嬢に戻る。魔術師としての成果も果たせなければ、肩書のないただの令嬢に戻れる。そう思ったんだ。

 なのに、リゼットが選択したのは、死。

 私はそんなことを望んでいない。婚約者でなくなろうが、リゼットの幸せを願い、援助するつもりだったのだ。

 愛しているからこその選択だった。

 私は上半身を起こし、ある人物を呼んだ。その人物なら、いい解決案を出してくれるだろうと信じて。
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