人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「え? どうして?」
「恐らく、貴女の魔力が魔石に定着した結果ね。直に食事も摂れるようになると思うわ」
「人形の体なのに、ですか?」
「元々、ほとぼりが冷めたら、貴女を人間に戻す予定だったの。でも、マニフィカ公爵様は貴女を離さないし、奥様と冷え切っている状態で近づいて、誤解を招くのも困って、できなかったのよ」

 サビーナ先生はさらに、人間に戻るためには時間を有し。小まめに様子を見る必要があることを告げた。

「貴女が人形になった後も、しばらく様子を見るためにマニフィカ公爵様と会っていたら、余計な噂が立ってしまったしね」
「私を追い出して、サビーナ先生が婚約者の座に座ろうとしている、とかですか?」
「あら、よく分かったわね」
「散々、私を攻撃してきた人たちですから、容易に想像がつきます。ヴィクトル様の愛人の座を狙っていた使用人が何人かいましたので」
「……マニフィカ公爵様が一途な方だと知らないのね。人形になったリゼットを連れて行った時、『これでようやくリゼットを守れる』と言った方なのよ」

 守れる? ヴィクトル様は何も分かっていらっしゃらない。私のことも、ユベールのお祖母様のことも。
 一番必要な時に守れなければ、何の意味も持たないことを……!

「……不器用な方だったんだね、お祖父様という人は」
「はい。ユベールの言う通り、不器用で……優しい人でした」
「その優しさをお祖母様にも向けてほしかったかな。少しでもいいから」
「そうですね」

 ユベールの言っていることは正しいのに、胸がズキンと痛んだ。これもまた、魔石に魔力が定着した結果なのだろうか。
< 100 / 230 >

この作品をシェア

pagetop