人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「早くなる、とはどういうことですか?」
「ふふふっ。そろそろ人間に戻りたいと思う頃合いだと感じたからよ」

 人間に……戻れば抱きしめられるのに、と昨夜は思ったけど……!

「幸せになってね、リゼット」

 サビーナ先生の言葉に私は胸が締めつけられた。私にそんな資格はあるのだろうか。ユベールにはここにいて、と懇願されたけど……それさえも私は迷ってしまった。

 幸せになってもいいの? ヴィクトル様の孫であるユベールと、これからも一緒にいていいの?

 答えの返ってこない質問が、浮かび上がっては消えていく。悲しい感情は沈んでいくのに、嬉しい感情はたくさん出てきても、何故か苦にはならなかった。
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