人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「もう二年も経っているのに、女々しいわね」
「……分からないのならそれはそれで構わないよ。だけど、それでご主人と女将さんに迷惑をかけるのはやめてくれ。本当はシビルの依頼も、これで最後にしたいんだ」
「えっ! そんなの困るわ。ユベールに来てもらえなくなるのは」
「困るのは僕の方だよ。ほら、忙しいんだから要件を早く言ってくれ」
近くで荷物が持ち上げられる音がした。忙しいアピールをしたい、とユベールが言っていたから、これはそれなのだろう。
「分かったわ。ちょっと待ってて」
相手が溜め息を吐いた後、その場を離れたらしい。ユベールもまた溜め息を吐く。こちらは少しだけ長かった。
「はい、これ。内容はいつも通り、中に入っているわ」
「うん。確かに。それじゃ、僕はこれで」
「あっ、待って、ユベール!」
相手の悲痛な叫びなど意に介さずに、ユベールは歩き出す。本当に迷惑をしているのが、手に取るように分かる素っ気ない態度で。
そんな、初めて見るユベールの冷たい姿に、婚約破棄を言い渡した時のヴィクトル様の姿が一瞬だけ思い浮かんだ。
きっと、今のユベールを見たら重ねてしまうんだろうな、と思いながら。
「……分からないのならそれはそれで構わないよ。だけど、それでご主人と女将さんに迷惑をかけるのはやめてくれ。本当はシビルの依頼も、これで最後にしたいんだ」
「えっ! そんなの困るわ。ユベールに来てもらえなくなるのは」
「困るのは僕の方だよ。ほら、忙しいんだから要件を早く言ってくれ」
近くで荷物が持ち上げられる音がした。忙しいアピールをしたい、とユベールが言っていたから、これはそれなのだろう。
「分かったわ。ちょっと待ってて」
相手が溜め息を吐いた後、その場を離れたらしい。ユベールもまた溜め息を吐く。こちらは少しだけ長かった。
「はい、これ。内容はいつも通り、中に入っているわ」
「うん。確かに。それじゃ、僕はこれで」
「あっ、待って、ユベール!」
相手の悲痛な叫びなど意に介さずに、ユベールは歩き出す。本当に迷惑をしているのが、手に取るように分かる素っ気ない態度で。
そんな、初めて見るユベールの冷たい姿に、婚約破棄を言い渡した時のヴィクトル様の姿が一瞬だけ思い浮かんだ。
きっと、今のユベールを見たら重ねてしまうんだろうな、と思いながら。