人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「勿論だよ。そう約束したじゃないか」
「約束?」
「あれ? もう忘れちゃった? それなら何度でも言うよ。僕はどんなリゼットでも傍にいてほしいって」

 夢……なのかな。自分の望む言葉が返ってきた。だから今度は手を伸ばす。虚無に向かって。それなのに、あっさりと手を握られてしまった。

 凄い。どこまでも都合のいい夢。このまま、ここにいたいな。

「だから、目を覚まして? 僕はここにいるから」

 そうだ。心地よい夢の中にずっといたら、本物のユベールを一人にさせてしまう。

「一人にしないって、約束した」

 私は手を伸ばした先の方を見据える。すると、その場所を中心に、一気に明るくなり始めた。その光があまりにも眩し過ぎて、私は思わず目を瞑る。

 それでもユベールの声は聞こえて来た。

「そうだよ、リゼット。良かった、憶えていてくれて」
「うん。だって私も……一人になりたくない……から!」

 叫ぶ勢いに任せて、私は目を開けた。途端、ユベールの顔が至近距離にあって、思わず飛び出しそうになる。けれど、その当人に肩を掴まれていて、身動きが取れなかった。

 えっと、えっと、ここはどこ? というか、何が何で、何が起こったのーー!!
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