人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 私が勝手に縋って、勝手に恨んだだけ。シビルさんも多分、そうだと思う……。これを我が儘だと、一言で済ませてほしくはないところだけど。

 きっとユベールには伝わらない。ヴィクトル様もそうだったから。

「……僕はお祖父様のようなことは、しないけどな」
「え?」
「ううん。何でもない」

 そっぽを向くユベールの姿に、私は思わず首を傾げた。すると今度は、拗ねたような顔を向けられる。

「リゼット?」
「ごめんなさい、つい」

 それがあまりにも可愛くて、おかしく見えたものだから。
 口元を手で隠しても、笑っているのがユベールにバレてしまった。さらに咎められると分かっていても、笑いが止まらない。
 次第にユベールも諦めたのか呆れたのか、一緒になって笑ってくれた。

 あぁ、やっぱりユベールの傍は、居心地がいいな。心が温かくなるのを感じた。
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