人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「あら、忘れたの? 転移魔法陣の存在を。あれを使って回収したのよ。さすがに二人まとめて運ぶことはできないし、リゼットのあられもない姿を見せるわけにはいかないでしょう。一応、私のマントをかけたけど……それだけだとちょっと……心許ないから、ね」
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ。だけど、事件の当事者が街から消えるのは、色々と不味いでしょう。だからホテルの一室を借りられるまでは、私の家に一時的に避難させておいたのよ」
「ということは、ここはホテル……なんですか?」
「えぇ、そうよ」

 当然のことのように言うサビーナ先生を余所に、私は改めて室内を見渡した。
 確かに見覚えのない家具と壁紙。ベッドの様子など、少し考えればすぐに分かることだった。ここがユベールの家ではないことが。

「それでね、リゼット。起きたばかりで悪いんだけど、一緒に来てほしいところがあるの。いいかしら」
「何を言っているんですか、サビーナさん。リゼットは人間に戻ったばかりなんですよ」
「私も休ませてあげたいんだけどね。さっきも言ったように、先方を待たせているの。ユベールくんなら、この意味が分かるわよね」
「……はい」

 どういうこと? と私は視線をサビーナ先生からユベールに移す。
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