人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「ユベールも、そんな女がいるのに、私に気がある振りをして……酷いわ」

 へ?

「僕がいつ、気のある振りをしたんだよ。それにさっきと言っていることが違うぞ。確か……」
「ユベールくんに脅迫されていたから、やめてほしいと説得しに家まで行った、とシビルは言っていたんだよ」
「お父様っ! 酷いわ! 私がこんな目に遭ったのに、ユベールを庇うなんて。そうでしょう、お母様」

 隣に座る年配の女性に向かって、縋るように泣くシビル。
 顔の半分を赤毛で隠しているため、本当に泣いているのか、定かではなかった。が、今はそれが問題ではない。虚偽の発言が問題だった。

 幸いにも、誰もそれを真に受けていないからいいものの……。下手をしたら、こちらが悪者扱いされてしまい兼ねない状況だった。

 う~ん。何と言うか、あまりにも強烈過ぎて返す言葉が浮かばない。最初の怒声は、昔を思い出して、条件反射で体が反応してしまったけれど。その後の言動が……凄すぎて……。
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