人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「被害者なら、何故、ユベールくんの家にいたの? それも外に」

 痺れを切らしたサビーナ先生が、一人ソファーに座るシビルに近寄る。

「説得にしに行ったと言うのなら、家の中にいるべきではないのかしら」
「それは……あの女がいたから」
「これはあくまで仮に、ユベールくんから脅迫を受けているのが事実だという前提で言うけれど。貴女のような性格なら、それを秘密にしたがるものじゃないかしら。違う?」

 確かに、プライドが高そうに見えるから、そんな汚点は知られたくないはず。そもそも私の存在を、シビルが知っていたとは思えない。

 私がユベールに拾われてから、三カ月。サビーナ先生以外は誰も、訪ねては来なかった。家の近くに来ていた可能性も否定できないけれど、私は人形の姿だったし……。

 そう考え込んでいると、突然シビルに指を差された。

「あんたが全て悪いんじゃない!」
「え?」
「今は人間の姿をしているけど、元々は人形だったじゃない。気持ち悪いのよ!」
「シビル!」
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