人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 今にも掴みかかろうとするユベールを、私は止めた。だって、事情を知らないシビルからしたら、気持ち悪く感じるのは当然だと思ったからだ。

 人間の振りをしている人形……そう認識している立場からすれば。
 けれど、どう言えば通じる? 本当のことを言えば、ますます私の立場は……ううん。ユベールの立場も悪くなってしまう。

 下手したら、もうこの街にはいられなくなる……!

 折角ユベールが、頑張って築き上げていたものを、私の手で壊すことになるのだ。
 そんなことはしたくない。私さえ我慢すれば、きっとここは穏便に済ませてくれるだろう。

 私が謝りさえすれば……たったそれだけでシビルの怒りが収まるのなら……!

「不快な想いを――……」
「リゼット。大丈夫。ここは私に任せて。貴女は私の大事な弟子であり、養女なのだから。今度こそ、貴女を守らせてほしいの」
「サビーナ先生?」

 とても心強い言葉だけど、養女ってどういうことですか?
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