人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「いくらほしくても、ユベールはものではありません。そこに感情があります。シビルさんは同じことをされても平気なんですか?」
「同じことも何も、ウチに来た方がユベールだって幸せに決まっているわ。それが分からないの?」
「分かりません。私はユベールではありませんから。それにユベールが決めることであって、シビルさんではありません。勝手に決められるのは、シビルさんだって嫌じゃありませんか? それが自分の意に添わなければ、特に」
「……あんたも、私が悪いって言うんでしょう」

 すぐに答えを導き出すのは、何も悪いことじゃない。商人の娘ならば、尚更だ。即断即決を迫られる場面もあるだろう。
 しかし今は、商談の話をしているわけじゃない。相手の気持ちに寄り添ってほしい、と言っているのだ。

 どういえば、シビルさんに伝わるんだろう。

「悪いとは言っていません。ただ、罪を認めてほしいんです。シビルさんが火をつけたこと。それに至った経緯。それとご両親に対する謝罪も含めて、きちんと話してさえくれれば……そうですね。シビルさんの火傷は私が治しましょう」
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