人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「あらあら。恥ずかしいのかしら」
「それもありますが……」
「別に気にする必要はないのよ。ほら、向こうは自分たちのことで手一杯みたいなんだから」

 背中をポンポン叩かれて、私は後ろを振り向いた。すると、涙を流すシビルと、愛おしそうな視線を送るご両親の姿が目に入った。

「サビーナ先生。私、初めてです」
「何が?」
「私が魔法を使って、あんなに喜ばれたことが」
「……だったら、目に焼き付けなさい。そして自信を持つの。できないと思っていれば失敗する確率は上がるけれど逆は? 成功する確率が高くなるとは思わない?」

 サビーナ先生の言う通りだ。昔の私は周りの評価が気になり過ぎて、思うように魔法も体も、心さえも固くなり過ぎていた。

 私の一つ一つにケチをつけ、やること成すこと否定する。本当に嫌な人たちだった。それでも当時の私は、あんな人たちに認められたいと思っていた。

 けれど今は違う。私を認めてほしいのは、ユベールとサビーナ先生だけ。だから治癒魔法を使った。二人のために私ができる最善の利益方法だと思ったからだ。

 何で、こんな簡単なことが分からなかったんだろう。
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