人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「相手は虚言癖の持ち主なのよ。ご両親もご存知だからいいけれど、知らない人たちはあの子の証言を真に受けてしまうわ。何せ、ラシンナ商会のお嬢さんなんだから。不利な状況に陥るのは目に見えているもの。だから現場の状況をしっかりと把握して、あらゆる仮定を想定しておかなければね。これで多少は防衛できるんだから」
「そう、なんですか?」
「……あぁ、そっか。リゼットはずっとマニフィカ公爵家の中にいたから……だからあぁなったのね」

 何かを納得したのか、視線を私からユベールへと移す。

「ユベールくん、リゼットはこの時代を知らない、というわけではなく、最初から世間を知らない子なの。だから、よろしく頼むわね。お嬢さんのような我が儘を言う子じゃないから安心して」
「むしろ、少しくらい我が儘を言ってほしいところですね。そうじゃないと僕の方が色々、要求しそうで……」
「そうね。リゼットはすぐに遠慮してしまうから。さっきだって、お嬢さんに謝ろうとしていたでしょう」
「……私が謝って済むことなら、いいと思ったんです」

 シビルの怒りの矛先は私だったから。
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