人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「履き違えている者に頭を下げれば、増長させるだけ」
「でも、私のリペアではシビルさんを治せなかったから……」
「これは私の憶測だけれど、リゼットはお嬢さんを知らないから治せなかったんだと思うわ」
「確かによく知りませんが……それが何の関係があるんですが?」
「実はね。ユベールくんの家を見に行った時、外側は焼け焦げていたけれど、中は元のままだったの」

 え? つまり、焼けていないってこと?

「さらにユベールくんとお嬢さんの状態の差を見れば一目瞭然ね。多分、リゼットは自分の見た、記憶したものを修復したのよ。だから、お嬢さんを治すことができなかった」
「っ! やっぱり、私の魔法は欠陥なんですね」
「違うわ、リゼット。そもそもリペアを使うつもりがないまま使用したのだから、欠陥が出るのは当たり前のことよ。私が言いたいのは、人間に戻る過程で莫大な魔力を使うのに、さらにリペアを使用して、ユベールくんたちを助けたことを称賛したいの」

 あれ? 何だか褒められている?

「あと分かっていないから、もう一つ言うけれど。お嬢さんが火傷程度で済んだのは、リゼットのお陰なのよ。家の状態から推測しても、焼け死んでいたっておかしくはなかったんだから」
「……サビーナさん。もう一つ忘れていますよ」
「あら、私としたことが重要なことを……」

 二人の言いたいことが分からず、首を傾げているとサビーナ先生が私に近づき……。
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