人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「それはユベールくん次第ね」
「え?」
「ふふふっ。だってそうでしょう。リゼットを連れて行きたくても、ユベールくんが嫌だと言ったら、無理だと思うのよ」
「そうでしょうか」

 正直に言って、自信がない。けれど、引き止められる自信はある。
 リゼットは優しいから、聞いてくれるかもしれない。僕が一人は嫌だと言ったから、傍にいてくれたんだ。約束だって。リゼットも一人は嫌だからって。

 でも今のリゼットは一人じゃない。サビーナさんという家族を手に入れた。それじゃ、僕は?

「サビーナさんが僕も引き取ってくれるのなら、いいですけど」
「それはダメ」
「何でですか?」
「リゼットをエルランジュ姓にしたくないの。この名字は長く使っているけれど、結局は偽名だからね。リゼットも含めて、ユベールくんにも使ってほしくはないのよ。それにリゼットにはマニフィカの姓が相応しい」
「お祖父様と添い遂げなかったからですか?」

 あまりリゼットに、過去を押し付けないでほしい。
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