人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「気を遣ってもらえたのか、もしくは……」

 フロントへ行く以外にも、用事があったのかもしれない。シビルが無事に、憲兵に連れて行かれたのか、など。

 本人は安易に犯行を行ったが、放火は重罪だ。資産を奪い、命さえも奪い兼ねない。最も恐ろしい罪。その危険性も分からないなんてな。
 だから、亡くなった両親を軽視するのか。自分が命を落としかけても尚、それが分からないとは……。

「リゼットはどうなんだろう」

 お祖父様に婚約を破棄された直後、死を願ったという。

「もう、そんな考えはないよね。約束したんだから」

 一人にしないって。

「だから、リゼットがどんな選択をしても、僕はついて行くよ」

 家族になりたいんだから。僕を除け者にしないで。

「リゼット……」
< 188 / 230 >

この作品をシェア

pagetop