人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「ごめん。困らせるようなことを言って。本当は、怖かったんだ」
「何が? あっ、まだシビルさんみたいな人がいるの?」
「いないよ! 僕、そこまでモテないし。シビルのは……たまたまで……リゼットに会うまでは、誰かを好きになったことだってなかったんだから」
「ユベール……それって……」

 心臓が物凄い勢いで、煩く鳴った。この先を聞きたいようで、聞きたくない。

 ユベールが手に力を入れるのを感じる。けれど何故だか、腕が痛いとは思わなかった。

「リゼットが好きなんだ。だから、怖かったんだ。急にいなくなったら、と思うと余計に」
「そんなことしないわ、絶対に。何も言わずに、ユベールから離れるなんて……ううん。そもそも離れようだなんて思っていないよ。だって、私もユベールのことが……好き、だから」

 い、言っちゃったーーー! ヴィクトル様にも言えなかった言葉を……!
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