人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 私の場合は、どこか贔屓目で見てしまうし、何よりユベールが作ってくれたものを嫌いになんかなれない。
 けれど服を専門に扱う店の主人の言うことだ。ユベールにおべっかを使う必要もない。純粋に友人を喜ばせたい気持ちが伝わってくる声音だった。

 だから、サビーナ先生の言葉もまた、嘘ではないのだろう。それがとても嬉しかった。

「顧客は少ないだろうけど、ユベールくん一人で作るのなら、問題ないでしょう。それからリゼットには、私の補佐をしてもらいたいの。勿論、さっき言った転移魔法陣などの魔法の教授も、望むのならいくらでもするわ。どうかしら。悪くない話だと思うんだけど」
「そこまで用意されていて、こう言うのはどうかと思うんですが、お給料は出るのでしょうか。サビーナ先生の補佐、というのも私に務まるのか不安ですし。むしろ、サビーナ先生のところで学びながら、魔術師協会の本部で働かせていただけるように頑張った方がいいと思うんです」

 段階を踏まずに、未知の世界に踏み込むのは怖い。何も知らずにマニフィカ公爵家にやって来た時と、まるで状況が同じだったからだ。
 これではまた、嫌がらせを受けてしまう。そんな気がしたのだ。
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