人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「マニフィカ公爵様と一緒に、竜を退治できていれば、魔術師としての功績は絶大。現にユベールくんのお祖母様は、マニフィカ公爵家が没落した後、魔術師協会本部に身を寄せていたからね。理事として」
「サビーナさん、言っていましたよね。リゼットをエルランジュ姓ではなく、マニフィカ姓にしたいって。それがあるべき形に戻すことだって。これもその一環なんですか?」

 あるべき、形……?

「どういうことですか? サビーナ先生」
「そのままの意味よ。本来、享受すべきものを享受させる。魔術師協会の理念にも則ったやり方。これは元々、魔女たちの考えなのよ。人形にしなくても、もっと他に道があったんじゃないかって、ずっと後悔していたから。でも、ユベールくんと過ごすリゼットを見ていたら、そんな考えも吹っ飛んだの」
「サビーナ先生……そこまで……」
「これは私が勝手に思っていたことだから、リゼットに責任はないのよ。これから二人の世話ができると思うと、ワクワクしちゃうくらいなんだから。あっ、勿論、お給料は出るから安心して。二人が自立できるようになるまでが、私の仕事だと思っているから」

 気にしないで、とでも言うように、私の手を取るサビーナ先生。
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