人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「あと、養女の件。勝手に決めて、手続きしてしまって、ごめんなさいね」
「そんなことはありません。むしろ嬉しかったので、謝られると逆に困ってしまいます」
「あら、嬉しいことを言ってくれるのね。事件直後、ユベールくんの立場では、私が後ろ盾になることは難しかったの。没落したとはいえ、元貴族だから。魔術師協会もうるさくてね。でもリゼットなら、同じ魔術師だから簡単に手続きできたってわけ」
「魔術師を保護する名目、でしたっけ?」
「そうよ。よく覚えていたわね、リゼット。上出来よ」

 サビーナ先生の言葉に頬が緩んだ。昔もこうやって、褒めてもらうのがとても嬉しかったから。
 すると後ろから、何かを引きずる音がした。振り向こうとした瞬間、肩を掴まれてそのまま下に。椅子に座らされたのだ。ユベールによって。

「可愛い娘なら、いつまでも立たせておかないでくださいよ」
「あら、私としたことが。でも、私の隣に座らせたくはなかったでしょう?」
「まぁ、そうですが」

 気まずくなったのか、ユベールは自分の椅子も持って来て、私の隣に腰を下ろした。
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