人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 そう、私たちは電車などの交通機関を使って、遥々北の雪国に来たのだ。その手配をしてくれたのは、他でもないサビーナ先生。
 何せ、私は行先も場所も知らない。ユベールに至っては、行先しか知らないというのだから驚かされた。

 それくらいヴィクトル様は、ご家族の方に忌避(きひ)されていたらしい。この凍てつく冷気が、まさに証拠とでもいうように、私たちにその感情をぶつけてくる。

 さらにいうとヴィクトル様のお墓の場所も、それを物語っていた。何せここはかつてのマニフィカ公爵領ではない。
 行ったことはないけれど、マニフィカ公爵領はもっと過ごし易い場所だと、かつてヴィクトル様に教えてもらった。

 首都に負けない華やかな街並み。主な収入源は、広大な土地で栽培している農作物と数多の鉱山。マニフィカ公爵領はこれらの資産で成り立っているのだと言っていた。

 いくら没落したからといっても、領地には領民が住んでいて、土地だって簡単になくなるものではない。急に寂れることだって……ない、と思う。

 だから、こんな雪が降る場所ではないことは一目瞭然だった。
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