人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 サビーナ先生の話によると、ヴィクトル様が死した後、ユベールのお祖母様の意思によって、この辺境の地に埋葬されたのだという。
 竜の大移動を阻止し、その元凶だった竜を退治した英雄が眠る場所として相応しくない場所。
 けれどユベールのお祖母様の下した処置は、妥当だと思った。

『人は死した後の(とむら)い方によって、その真価が問われるわ。生前いかに偉くても、最低な人間ならば扱いも酷くなるし。逆に身分が低くても、善人だったら皆が嘆き悲しんで、それに相応しい送り方をするものだから』

 つまり、最後の最後でヴィクトル様は、彼女たちから小さな復讐を受けたのだ。それに対して同情できるのは、恐らく私だけだろう。

 私のために。そして私のせいで、ヴィクトル様は家族を蔑ろにしてしまったのだから。

「ユベール、待って!」
「どうしたの?」
「サビーナ先生が……じゃなくて、えっと……ちょっと休憩しない?」

 先ほど見たサビーナ先生の様子が心配になったのだ。けれどそれをユベールに告げるのは憚られる。
 私がサビーナ先生の養女になった件で多少は緩和したけれど、どうもこの二人は仲が悪い。いや、ユベールが一方的にサビーナ先生を嫌悪しているように見えるのだ。
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