人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「身分が違うのだから、私からなんてできないわ」
「そっちじゃなくて、お祖父様の方」
「ヴィクトル様の?」
「不器用だと思ったら、奥手でもあったんだね」

 ユベールはそう言うと体を離してくれた。

「でも、今はそれが有り難いかな。リゼットの初めてをもらえるんだから」
「い、言い方!」

 すでに人形の時に裸を見られているから、何とも言えなかった。あと、火事の時も……。ユベールの話だと、見ていないらしいけど……どこまで信用していいものか……。

「どうですか? お祖父様。今のリゼットを見て。羨ましくても、化けて出て来ないでくださいね。もう、僕のものなんですから。リゼットの夢にまで出て来たら許しませんよ」
「ユベール。最後のは無理があるんじゃないかしら」

 どんな夢を見るのかは、私も決められない。ヴィクトル様が出てくることだって……。

「いいんだよ。これは決意表明みたいなものだから。あと、牽制」
「死者に牽制?」
「そうだよ。いつまでもリゼットの思い出に居続けるんだから、ちゃんと言っておかないとね」
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