人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「あとは、あんたの母親」
「サビーナ先生?」
「そう。今朝、「これでようやく、旅に出られるわ~」って不吉なことを言いながら、楽しそうにスキップしていたから」

 スキップって、永久の時を生きる魔女が? いやいや、今はそっちじゃない。

「旅ってどういうこと?」
「それはつまり、新婚の家にいるのは気が引けるから、旅に出るってことじゃないの? あんたたち、こっちが恥ずかしくなるくらい、ラブラブなんだもの」
「ユベールはともかく、私は……」
「違うって言うの? お客と称してユベールに近づく女の子を前にして、大胆なことをしたって聞いたわよ。確か、ユベールに胸を押し付けたとか」
「言い方! 抱き着いた話が、なんでそんな湾曲しているの?」

 明らかにマーガレットの悪意を感じる。

「ふふふっ。いいじゃない。こっちの方が喜ぶと思うわよ」
「マーガレットが楽しい、の間違いじゃない?」
「あら、心外ね。広めてほしいって頼まれたのに」
「誰に?」

 というより、どっちに? の方が正しいのかもしれない。
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