人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「やはり、そう思ってしまうのね。マニフィカ公爵様の本心を知っても」
「簡単には(くつがえ)せません。それに落胆を得るのなら、希望を抱きたくないんです。私はたくさんの人の期待を裏切り、裏切られて人としての価値を失いました。サビーナ先生だけです。未だに教えに来てくださるのは」

 それなのに先生はヴィクトル様の肩を持つ。結局、他の家庭教師と変わらなかった。
 ほら、また落胆をする。だから、希望なんて……!

「あぁリゼット。貴女が改心してくれたのなら良かったのに」
「サビーナ先生?」
「そうすれば、私は貴女にこんなことをしないで済んだのに」
「何を仰っているんですか?」
「やはり貴女のことを理解していたのは、マニフィカ公爵様なのね」

 ヴィクトル様?

 意味の分からないことばかり言うサビーナ先生に、もう一度尋ねようと口を開けた瞬間、床が赤く光った。正確には、私の真下。

「ま、魔法陣!?」

 知らない間に私は、文字や模様が何重にも書かれた魔法陣の中心に座らされていたらしい。
 そういえば、と目が覚めた時のことを思い出した。気が動転して、疑問に感じなかったが、今なら分かる。
 何故、サビーナ先生が椅子に座っていて、私が床に座らされていたのかを。
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