人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 それもご丁寧に私の体を柱に縛っている。その理由が、今ここで判明したのだ。
 体はロープで縛られていたが、さっき手は自由にしてもらった。
 何とかして、脱出しないと!

「リゼット」

 しかし、そんな私の考えなど、サビーナ先生にはお見通しだった。
 すぐに手を後ろで組まされる。

「大人しくして。これは貴女のためなの」
「それなら、すぐにやめてください。何をするのか分かりませんが、私は静かに死にたいのです。殺すつもりがないのなら、やめてください!」
「ダメ。私は貴女に生きていてほしいの。だから――……」

 その後の言葉はもう、聞こえなかった。
 赤い光が強くなり、サビーナ先生の姿が見えなくなる。
 それと同時にやってくる眠気。

『生きていてほしい』

 手紙に書かれたヴィクトル様の字。
 サビーナ先生の声。

 この魔法はきっと、その二人の願いなのだろう。どんな魔法なのか。
 それを私が知ったのは、百年後の未来だった。
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