人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 向った先は奥の奥。恐らく、玄関から一番遠いのではないか、と思うほどの距離だった。これなら私が体を動かせたとしても、ユベールの指差した先は見えないと思う。

 やっぱり高さかな。風魔法を使えば、人形の私くらい浮かせられるかも。

 けれど魔法を使えば魔石から光が出るのだから、結局のところ、無理な話だった。

「リゼット、どうしたの?」
「すみません。ちょっと考え事をしていました」
「あぁ、僕がどうやって生計を立てているのか、予想していたの?」
「は、はい」

 実は違うことを考えていたのだが、肯定の返事をした。ユベールの言っていることも、気になっていたのは事実だったからだ。
 それでも不審に思われたかな、と見上げると、ユベールは気にする様子もなく、前を見据えていた。私もつられて視線を動かすと、そこには様々な種類の布がテーブルの上に置いてあった。

「答えはアレだよ。ブディックや仕立て屋から、ハギレを貰って小物を作っているんだ。時々、出来の良いはそのお店に置かせてもらったり、買い取ってもらったりしてね。なかなかいいお金になるんだよ」
「そういえば、ユベールの服装も……」

 孤児という割にはいいものを着ている。
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